2026年の畑シーズンがいよいよ幕を開けました。
まずはエンドウの種まきから始まり、レタス、キャベツ、ブロッコリーと、春の緑黄色野菜がつづきます。


種まき用の土は、昨年の踏み込み温床の材料が微生物によって分解され腐葉土となったものを使用しています。
2月も中旬になったので、そろそろ3月中旬に種をまく夏野菜の準備がしたくなってくるころ。。今年の2月は異様に暖かいのですが、夏野菜にはまだまだ寒い季節。生育に最低でも20℃以上の温度が必要なため、温かくして育ててあげる必要があります。特に重要なのが、夜間の温度です。

この時期でも日中は30℃近くまで温度が上がる、標高570mの北杜市内のビニールハウスですが、日暮れから一気に温度が下がり、翌朝には氷点下になることもしばしば。種をまく3月ごろから、最後の霜が降りる5月頭ごろまでの約1か月半の間、常に温度を保つ必要があります。
温度を保つ方法として、一般的な農家さんではサーモスタット付きの電熱装置や石油ボイラーなどが使われます。サーモスタットで自動制御されるため、ほぼ手間がかからずに苗を育てることができます。
しかし、私たちは有限の資源に頼らない方法を選んでいます。
それが、「踏み込み温床」と呼ばれる、江戸時代には存在したといわれる農業技術です。
落ち葉、稲わら、米ぬかなど、身の回りで集められる資材を混ぜて発酵させ、発酵する際に微生物の活動によって生まれる「発酵熱」を利用した保温技術です。

従来は、掘った穴に材料をミルフィーユ状に順番に詰め、水をかけてぎゅうぎゅう踏み込む作り方でしたが、失敗が多いため近年は改良され、材料を混ぜて山積みにし、熱が上がったところで穴にぎゅうぎゅう踏み込む方法が主流になっています。山積みにすることで十分な酸素を供給し、爆発的に発酵がスタートし、それをぎゅうぎゅう踏み込んで酸素を適度に抜くことで、少ない酸素でじわじわと発酵が続くようになります。これにより、約30℃の温度が安定的に2か月ほど続きます。
私たちは温床用に木枠を作り、発酵が始まった材料を詰めて苗を育てています。

木枠のサイズは長さ7m、幅90㎝、深さ90㎝で、コンパネと木材を組み合わせて作っています。容量は約600リットルですが、地下水位が高いので過湿にならないよう、太い竹を敷いて20㎝ほど底上げしています。過湿になると酸素が少なくなり、温度が上がらないからです。
さて、まずは材料集め。
落ち葉は地域の道路清掃で近所の方々に協力してもらい、1立方メートルの袋2つ分になりました。平均年齢75歳の近所の皆さま方。。この世代の地元の方々というのは首都圏と比べると圧倒的に元気な気がします。様々な活動がある地域コミュニティに属していることと、ストレスフリーな環境が長生きの秘訣でしょうか。近隣の人たちを気にかけながら、頼り、頼られる関係が在るということは、面倒なようで、一番の薬なんだと思います。
落ち葉はその他、近くの山に集めに行ったり、別荘地の落ち葉をいただいたりして集めます。全部で80Lの麻袋が50袋分です。

稲わらは自分の田んぼで育てたお米の稲わらを20㎝くらいにカットします。こちらも麻袋に50袋分準備します。

米ぬかともみ殻はさすが米どころ。近所でいくらでも手に入ります。
自分の住んでいる場所の周囲半径5㎞以内で全ての材料が集まるのは、恵まれた環境といえるのでしょう。この恵まれた環境も、人の手が入らなければ、徐々に荒廃し、人が入っていくのが難しくなり、獣たちの楽園となり、自分たちの生活圏が脅かされる結果になっていくでしょう。。落ち葉を集めて利用すること。一昔前までは当たり前のように行われており、冬の山の地表はいつもピカピカだったそうです。夏は下草が生え、シカやウサギの命を育み、動物たちは人里へはめったに降りてこなかったそうです。
さて、2月15日、集めた材料に水をかけながら混ぜ合わせて、いよいよ仕込み開始です。いまや消えようとしている踏み込み温床の技術を広く伝えるべく、ボランティアを募集して、今年は過去最多、なんと10人以上の方々が参加してくださいました。

寒空の中、水をかけて重くなる材料を、ひたすら手作業で混ぜ続けるという結構ハードな仕事ですが、集まった人たち皆で思い思いの話をしながら、楽しく進めることができました。それぞれに自分の生業や目標がある人たちが集まり、共に手を動かしながら話していると、自然と話が盛り上がり、化学反応が起きてくるような気がしています。落ち葉が醸され、人間関係が醸される。発酵が人間に及ぼす影響は、計り知れませんね。

積み上がった山はまるでナウシカのオームのようにも見え、巨大な生命体だなあと感じます。この中で億千万の微生物が活動し、熱を発するのですから。